小江戸・川越言葉
地元には地元でしか通じない言葉がある。
小江戸にも小江戸でしか通じない言葉があるような気がする。
まだひとつも思いあたっていないところが不安だが、無理矢理にでも挙げてみたいと思う。
そういえばかなり前になるが、タイ人のマダム達と知りあった時に、菓子をもらったので「コップンカー(ありがとう)」と言ったら大爆笑が起きた。
ものは試しでもう一回言ってみたら、笑いすぎて涙を流す者まで現れた。
これは海を渡ればコップンカー芸人として金になるんじゃないか。一瞬、そんなことを夢想した。
ただウケてる理由が全然わからなかったので聞いてみると、「アナタソレタイノオンナノコトバ」だそうだ。
どうやらタイ語は語尾を短く切ってアクセントを上げると男、語尾を伸ばしつつ下げてくと女らしい。
要するに「コップンカッ!」であれば正解だったとか。
それから何度か意図的に「コップンカー」をやったが、日を追うごとにマダム達の笑いは少なくなり、最後はおれを見る眼が「ソレモウアキター」と言っていた。
そうか、これが一発屋を見る眼か。
「でもそんなの関係ねえ! でもそんなの関係ねえ! はい、コップンカー!」
「山車」
「さんしゃ」でも「やまぐるま」でもない。もちろん「さんぐるま」でもない。
「やまだ」と見間違えた人はもう論外。
これで「だし」と読む。川越祭りに出現する装飾された引き車。
子供のころより数えきれないほど行っているが、2012年の川越祭りは一生忘れないだろう。
話したい話ほど、話せないものである。
ちょうちんまつり
言葉だけ見るとおっさんの宴会芸みたいだが、そうではない。毎年夏に行われる祭り「川越百万灯夏まつり」の通称である。
期間中は町中に色とりどりの提灯がともり、万華鏡のような美しさで夏の夜を彩る。川越祭りよりも規模こそ小さいものの、勝るとも劣らない魅力をもった、市民にとって大切な行事のひとつである。
それにしても「夏祭り」という言葉を聞くと、なぜか切なく甘酸っぱいノスタルジーで胸がいっぱいになる。
「きーみーがいた夏は遠い夢のなかぁーあー……」
かの名曲を口ずさみ、センチメンタルな気分に浸るのは毎年のことだ。
よくよく考えてみると、センチメンタルな思い出なんて特にないことに気づくのも毎年のことだ。
"きみ"って誰? 誰にあたるの? おれにとって。
そんなちょっぴり病んだ自問自答を繰り返しているうちに、気づけばもう秋ですね。
今年の夏の思い出は、ガリガリ君で当たりがでたことです。
「クレモ」
川越駅を出てすぐの小江戸最大の商店街、クレアモールの略称。生活で必要な大体の物がここで揃う。
クレアモールに行くと約80%の確率で元・同級生の誰かと出くわす。その際、100%の確率でおれは目をそらす。
他人にしては不自然なほど他人のふりをする秘技である。
クレアモールの名称は割と最近ついたものなので、以前の名前、サンロード、新富町通りと呼ぶ人もまだ結構いる。
慌てないこと。
「しえき」
川越は「川越」の付く駅が密集している。ちなみに「しえき」と言ったら、川越市駅。
「にしかわ」は西川越駅。混乱してきますね。
「ほんかわ」は本川越駅。
「かわごえ」は川越駅。
「あなたはだれ」
「ぼくはくま。くるまじゃないよ。くま」
「いや、少なくとも人間のおじさんですよ」
なんだこれ指が勝手に。
「かわたか」
県立川越高校。最近あんまり聞かなくなったウォーターボーイズのモデルになった高校。
進学校でありながら、のびのび自由な校風が特徴。制服はないが、校則で決まってるんじゃないかと思うくらい、みんなチェックのシャツとジーパンと白スニーカーの三種の神器。
「かわじょ」
県立川越女子高校。川越市駅は小さな駅なのだが、そこを使う女子高が三つ(うち二つは限りなく女子の多い共学になった)もあるという謎。
上品でおしゃれな制服なのが山村。古き良き昭和の女子高生がいたら、それは伝説的に厳しい校則の星野。で、気だるい目でたるんたるん歩いてるのがいたらそれが川越女子だ。
なのに偏差値は一番高いという謎。制服をオシャレにではなく、すこぶる楽ちんな方向に着崩すのが川女流だ。
「がっくりパンツ」
高校時代の学年主任が学年集会でよく口にした言葉。
うちの生徒がなにか不祥事とか問題を起こしたときに、ため息と共に吐き出された。
「いやいや、普通こんなことありえませんよ。本当にがっくりパンツですよ」 こんな具合に使われる。
あまりに聞きすぎたせいで、くすりとも笑い声は起きなかったが、今思い出してちょっと面白いなと思って挙げてみた。
有名人の言葉かと思って、たった今ググってみたが、まったく引っかからなかった。
パソコンの検索履歴に残った「がっくりパンツ」の文字の哀愁は凄まじかった。
「コエダ―」
川越が大好きな人のこと。自己申告制。
ちなみに小江戸検定最難関の一級以上だと小江戸川越マイスターになる。
ホームページによると、現在24名のマイスターがいるそうだ。さらにマイスターになると小江戸川越マイスター会に入会できる。
しかし写真を見た限り、凄まじい威圧感だ。おれも自分なりに川越の貢献に努めてるつもりだが、このサイトなど「喝だ!」と一蹴されそうな張本勲的な空気を感じる。
「リソナ―」
りそな銀行を使ってる人。
埼玉県民といえば、りそな。都内であの緑色を見かけると旧友との再会に似た気分になる。
東京UFJのカードを持っていると非県民と毒づく奴がいる。
おれとか。
でも実はUFJ格好よいなあ、なんて憧れる奴もいる。
おれとか。
「なんこや」
川越市のはずれにある地名、南古谷(みなみふるや)の通称である。
お気づきの通り、音読みにしただけです。
要するにまあ、つまりは、それだけのことです。
ではまた明日。
「イモラー」
サツマイモ好き。
「イモホラー」
そのうえサツマイモ版画好き。
掘るのが好きなのは「イモホリー」。ネイティブ小江戸人でもよく混同する。
「カネ・マシーン」
時の鐘を自動的に鳴らす機械。
ラブ・マシーンの十倍は、なまぐさいネーミング。
「ジャワる。」
カレーの名店・ジャワにカレーを食べに行くこと。
「スカる。」
スカラ座に映画を見に行くこと。
「いまる。」
さんまの娘。
「いまる。」
しのぶの娘。
「じこる。」
もちろん、このコーナーのことだ。見切り発車の大事故。
「イモラー」あたりから、もうだめなことくらいわかってたよ。
※「イモラー」周辺から下は絶対に使用しないでください。使ってる人なんて見たことありません。